中野信子『サイコパス』を読んで
『サイコパス』は100人に1人いる!
文春新書から発行された、脳科学者の中野信子さんの著書『サイコパス』を読んでみた。
中野信子さんの『ヒトは「いじめ」をやめられない』を読んだ時は、衝撃でした。
『サイコパス』は、「人を見る目」を一新しなければならないかも、と感じました。また、ニュースの感じ方や見方も変わりました。
本を買ったのは6月頃だったのに、読み終えたのは12月になりました。
分厚い難しい本、というわけではないです。途中で読むのをストップしたため。
というのは、途中で「勉強の思考」になったため、前に進めなくなってしまったのです。といっても、参考書のようなものではありません。
私の精神状態の問題です。
でも、別の本を読んでいるうちに、その足かせがはずれ、やっと12月になって読み終えることができました。
『サイコパス』は「はじめに」から始まり、第1章から第6章へと、そして「おわりに」で締めくくります。
私が一度挫折したのは、第2章に入った頃でした。
第1章 サイコパスの心理的・肉体的特徴
第2章 サイコパスの脳
第3章 サイコパスはいかにして発見されてか
第4章 サイコパスと進化
第5章 現代に生きるサイコパス
第6章 サイコパスかもしれないあなたへ
まず、「はじめに」で明らかにされるサイコパスとは、100人に1人はいるとされ、
恐怖や不安を感じにくく、危険なことや普通は倫理的に行わないようなことも平気で行動ができ、
常習的にウソをつき、主張をコロコロと変える人。
ナルシスティックや堂々として見えたり、お世辞が上手く人転がし。
また、傲慢で尊大であり、批判されても折れないし懲りない。他者に対する共感性そのものが低い人。
そういう人が「サイコパス」とされています。
上記の項目が全て揃っているのが「サイコパス」という事ではなく、いくつか当てはまっていればサイコパスらしい。
私たちにとっては不都合な、迷惑な人と言わざるを得ない。
こんな人達が100人に1人はいるとされてる計算になるようです。
第1章 サイコパスの心理的・肉体的特徴
過去の大きな事件を検証し、サイコパスである可能性が極めて高い事例を上げて説明しています。
猟奇的な殺人鬼だけがサイコパスというわけでない。
外見で判断できるのか、どんな人がサイコパスなのかを分類し、4つの仮説をあげています。
サイコパスとはどういうことなのか、どういう人をいうのか、行動様式や内面の特徴を事例や仮説をあげて紹介しています。
第2章 サイコパスの脳
サイコパスの脳はなぜそのような働きをするのか、脳科学的の観点から探り、
知的能力、学習能力に関するサイコパスの脳の特徴、特質を検討しています。
サイコパスの脳は、多くの人の脳と構造的に違いがあるようです。
考え方が違うと言う前に、物理的に違う、ある意味障害ともいえそうな違いかもしれません。
そのため、人と共感を持てない、恐怖を感じにくい脳のため、合理的に考え、
「良心」も処世術としての手法でしかない。
しかし、全てのサイコパスの処世術が上手くいっているわけではないようです。
ハイリスク・ハイリターンを好むサイコパスは失敗もあり、悪いことをしたらすぐに捕まることも多い。
その逆に、世の中にうまく溶け込んでいるサイコパスも多くいる。
そんなサイコパスは、社会的地位が高い「勝ち組」として、社会に生きています。
第3章 サイコパスはいかにして発見されてか
サイコパスは先天的(遺伝的)なのか、後天的(生育環境など)なのかの研究結果を紹介しています。
歴史上にも、革命家や独裁者などは、多数がサイコパスだと考えられています。
時代的に、現在よりも「力」や「独裁」がサイコパスは必要悪で受け入れられたり、求められていたのかもしれません。
脳科学として、サイコパスは遺伝の影響は無視できない、と現時点ではいえるようです。
『脳の機能について、遺伝の影響は大きい』
『生育環境が引き金となって、反社会性が高まる可能性がある』
このようなことでも、全ての人がサイコパスとなる訳ではないという事も知っておかなければなりません。
第4章 サイコパスと進化
なぜ人類の中にサイコパスが一定数存在するのか、その問題は人類の『心』と関係があるようです。
サイコパスは厄介な存在ですが、人類を進化させた要因という見方があり、「良心」とは何なのか、サイコパスと良心の関係もおもしろいです。
第5章 現代に生きるサイコパス
現在の社会において、サイコパスをどう見抜き、どのように接すればいいのか。
また、男のサイコパスと女のサイコパスとでも違った表現の仕方があるようです。
あの事件の人はサイコパスだなとか、あの政治家もきっとサイコパスだと、みなさんもきっと思いながら読む進めていくでしょう。
第6章 サイコパスかもしれないあなたへ
自分や身近な人がサイコパスかもしれないと思った人はどうしたらいいのか。
まず、自己分析できるチェックリストの項目が載っています。
サイコパスであった場合治療できるのか、社会とどう向き合えばいいのか。
そして、、
4章から6章まで、解決策や対応策の結果や結論など佳境に入っているため、多くは書かないでおきますが、最後にサイコパスの多い職業トップ10をあげておきます。
1位 企業の最高経営責任者
2位 弁護士
3位 マスコミ、報道関係(テレビ・ラジオ)
4位 セールス
5位 外科医
6位 ジャーナリスト
7位 警官
8位 聖職者
9位 シェフ
10位 公務員
どうですか。あなたの職業は入っていませんでしたか?
どうして政治家は入っていないのかと、みなさん思っているのかもしれませんね。
中野信子さんの著書は最近よく読んでいます。
『サイコパス』の他に『ヒトは「いじめ」をやめられない』『脳はどこまでコントロールできるか?』。
無学の私にとっては、どれも驚きの連続です。そしておもしろいです。分からない事が多い所もおもしろいです。
ヒトは「いじめ」をやめられない
『サイコパス』は最近話題になっている本ですが、『ヒトは「いじめ」をやめられない』もその上をいく本だと思っています。
まず、タイトルに驚く。
実際、読んでみる前は「そんなことあるはずがない」と思っていた。
しかし、読み終えてから、いや、読み進めていく段階で「そういうことなのか」と理解もする。
仮説として、人類が生存していく中で、必要な手段の一つとして備わった機能のようだ。
いじめる側は、良かれと思いや仲間を思っての行動であることが根本にあるようです。
つまり、いじめているという認識がないようです。
ヒトは「いじめ」をやめられない事実を受け止めることで、いじめる側、いじめられる側、両者の対策が講じられるということなのでしょう。
やっぱり難しい問題です。